『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

昨年のことだが、僕はナイフを持った彼に襲われたことがある。


学校からの帰宅途中、人気のない路地だった。

表面に薄く光をまとったような刃が、物陰から飛び出してきた。

いいナイフだ、と思いながら反射的に鞄で払ってかわした。


ナイフに対して、使い手の精度と練度はかなり劣っていた。
それでも血を求める欲望は本物だった。

他者の命に1グラムの重みも感じない僕が、自分の生にどこまで執着しているかは不明だ。
少なくとも、何者か分からない相手にやすやすと差し出す気にはなれなかった。


こちらの懐めがけて、しゃにむに突き出されるナイフを叩き落とそうと、ぶんと鞄を振る。

僕の鞄が空を切り、勢いを殺しきれず胴ががら空きになった。

相手はすばやくナイフをかまえ直す。


が、


———突き出そうとする彼の動きが、突然静止ボタンを押されたように止まった。