『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——

文字を逆から読むのは得意なんです。

そう言いながら、彼女は向かいに腰をおろした。


真向かいから僕の読む本のページを見ただけで本を特定できる、ということらしい。



目の前の少女を見つめる。クラスメイトだが、これまで言葉をかわしたことはないはずだ。


事情は知らないが、高校2年からそれも一学期の途中に加わってきた、珍しい転入生だった。

他者に関心をもたない僕でも記憶にとどめるほど、彼女の存在感は特異だった。


それはつまり、クラスの連中が、

「ニシモリに『お兄ちゃん』とかいわれたら萌えねえ?」
「萌える。ってか、俺の妹が可愛すぎるんだが、ってなキャラみたいだよな〜」

などとしゃべっているのを聞いて、即座に彼女のことだろうと想像できるほどに。


ティーンズ向けライトノベル文庫の表紙から抜け出てきたようなルックスの少女。

つややかな黒髪は長く、腰のあたりまでのばされている。きわめて小柄な彼女の身長の、半分くらいありそうだ。寝ぐせやもつれなんて言葉など知らなげに、行儀よく背にたれている。のぞいたら顔が映るかと思うほどだ。

陶器のような白い肌。ガラス玉を思わせる瞳。

可憐な造形とは裏腹に、つねに冷めたような表情を浮かべている。
口調といえば、声優がクールなアニメキャラを演じているがごとくだ。


本人にそのつもりが全くなさそうなところが、よけいに作り物めいて映る。誰かが「リアル二次元」などと呼ぶのを耳にした。
一部には、熱心なファンもいるとかいないとか・・・・・


二次元だろうと四次元だろうと、興味はない。