「それより、まだ6時だ。もう少し寝ていたらどうだ?」

「でも、今日は学校ですし、朝ご飯だって作らないと…。それに、洗濯や掃除だって…」

「…8時に迎えにくる。ここから学校は10分もあれば着く。朝ご飯は……生憎、最近料理をしていないから、材料がない」

「いつもどうしているんですか?」

「大概はコーヒーだけだな」

「そんなんじゃ駄目ですよ。ちゃんと朝ご飯を食べないと1日の始まりなのに、力が出ませんよ?それに、副社長さんが倒れてしまっては大変です!」

「…創みたいなことを言うんだな」

「創くんですか?
…あぁ、きっとママの口癖だからですかね?昔からよく言われてたので、私も移っちゃったみたいです」

「あぁ…そうか」









奏大は何か思い出したようで、うっすらと笑みを浮かべていた。
それは昔、雨宮家に奏大が泊まった時のこと。
今と同じように、朝ご飯を食べないことを花菜の母親に注意されたことがあったのだった。
花菜の一言で昔の情景が思い出され、懐かしく思っていたのだった。




すると、花菜が自分のことを見ていることに気付いた。
花菜の視線に気付いた奏大は、元のクールな表情に戻ってしまった。