「こんにちは」


部室の扉を開けていつもように皆に挨拶をする音

けれど音の挨拶に返事をしてくれる人は誰もいなくて…

どうしてだろう?そう思っているところに声を掛けられる


「…こんにちは あの…サークルに参加希望ですか?」

「幹君…何言ってるの?」

「えっ!どこかでお会いしたことありましたか?」

「私…白川音子ですよ」

「「「えっーーーー」」」

サークル仲間の叫び声が部室の中に響き渡る

疑うような目を向ける人

口をぽかんと開ける人

呆然としている人

「…おっ音ちゃん?」

幹君は信じられないという顔を向けながら話し掛けてくる

「あまりにも変わってしまったから分からなかったよ…

でも間違いなく音ちゃんの声だね」

そう言って笑ってくれた幹君

「コンタクトにして少し化粧したんだけど…そんなにいつもと違う?」

顔を真っ赤にして俯き加減で視線を合わせてくれない幹君が話し出す

「そっそうだね…音ちゃんが綺麗過ぎるから間違って部室の扉を開けたのかと思ったんだ」

読み聞かせの会…このサークルは本好きの集まり

メンバーはちょっと前の私のようにあまり服装にこだわりの無い人が多くて、周りからはとても地味な印象のサークルだとは思う

けれども皆とても優しい人ばかりで、このメンバーの中にいることが音にはとても心地が良かった

幹君を筆頭に魅了的な声を持つ人が大勢いるのも事実、読み聞かせ会ではその魅力を遺憾なく発揮して毎回大盛況を博す…意外と人気のあるサークルでもあるのだ

いつものように話し合いが始まった…

でも一度変わってしまった表しがたい雰囲気は元には戻らず、音とサークルメンバーとの間に目に見えない壁が出来てしまったように感じる