「真里?」

ほうけている私に狐様も疑問を持ったのでしょう。視線を向けられ、心臓がバクンっと鳴りましたが、いつも通り気軽に返事をする。

「はい、大丈夫です。ちょっと熱気にあてられて…」

「熱くないけど…?」

「いいんです…!熱いんですー」

こればかりは慣れません。狐様と目が合うと固まってしまい、声をかけられるまで気づかないのです。

パタパタと手で仰ぐ真似をしながらチラリと狐様を見ます。

狐様を襦袢一枚で待たせてしまった事に申し訳なさを感じながらも、お傍に着物を置いてすぐに退室させていただきました。

これで私の出番は終わり。狐様と会う事はないでしょう……。

「さようなら、狐様!お元気で」