真里side

狐様のお部屋の前でお声をかけますと、すぐに返事が帰ってきました。そしていつものように襖に手をかけました。


「失礼します」


途端に、異様に不思議な気持ちになりました。あの狐様だからでしょうか?

狐様はもう起きておられ、縁側に座っておられました。

紅葉を背に座る姿は絵になります。

窓から溢れる朝日を浴びて胸まである鮮やかな黒髪が光を帯び、伏し目がちの目には儚しさを覚える。少女からは何とも言い難い神々しさが漂っていた。


あぁ、今日もお綺麗です。


まるで生きている世界が別のよう。

運良く年が近いという事で狐様のお世話をさせて頂いていましたが、このお姿を見れなくなるなんて残念どころじゃありません。

ですが褒めて褒めて褒めまくると、狐様はつけあがってしまうのです。なので今日もそれを隠して最後のお世話をしてきます。