「んー?自分じゃわからない」
「そうか〜?」
「そんなもんだよ。でもありがと」
背丈が低くなり掴めるのは上着の下のほうが限界。浅葱色の布をぐいぐいと引っ張って進ませようとする。
「おー行く行く!引っ張んなー」
わめく夕凪を気にせず引っ張りながら思ったことがある。
ーー殿下がいるって割には発展してない
直径10mほどの大きな木の中心を削られただけの家。その隙間を縫って、小川の透明な水が流れ出ていた。
なというか……田舎…だよね
「あ、言っとくけどここは村の端の方だからな。発展してねーとか思うなよ」
よくやくに離してもらい、頭の後ろで手を組みながらふらふらと歩く夕凪。
「……思った。中心地は違うとこなんだ?」
「……今から東にある城の周りを案内するから。村…ってより街みたいなとこ」
「……いやーでも、ここ山しか見えませんけど…?」
辺りを見回しても山、山、山。都会の「と」の字も出てこない。
夕凪は得意そうにニヤリと笑うと、「使い魔に頼むんだよ」と何やら呟いている。
「………?」
何をしたのか分からないでいると、目の前に黄緑の風が渦巻き始めた。
「用事、多い気がするけど」
中からは先ほど聞いたばかりの凛とした声のよく通る女性の姿があった。
「あぁぁあ!」
「なぁに、うっさいわね」
反応は先ほどと変わらず面倒くさそうにこちらを見据える。ーー瞬間、濃い緑色の瞳を開きこちらへ速足で近づく。
そして柊の両肩を掴まれ、真剣な表情で見つめられる。
「あ……様は……、……でここ……?いや、……つが呼……のか…。なら…」
小さな音量で素早く何かを言っているため、近くの柊にもよく聞こえない。
「サーシャル、どうした?」
夕凪も女性の行動が珍しいのだろう、頭にナテナマークを浮かべている。女性はそんな夕凪にハァと一息つく。
「今変幻してるから…わかるわよね?」
「……?」
「…………ハァ、まぁいいわ。この子は今日中にお迎えが来るはずだから。どこに行きたいの? 早く言いなさい」
「城下町」
女性はそれを聞くと、パチンと指を鳴らした。

