夕凪side
狐を売り飛ばす輩がいるとの情報で森の奥地へと入って行くと、いかにも怪しげな小屋のまえで言い争っている男女の声が聞こえた。男からは何の力も感じない。おそらく人間だ。女ーー否、少女は人間の姿へ変化しているのだろう、微かな妖気が漏れてくるだけだった。
「女子供を攫っていい気になるなんて、とんだ腰抜け野郎だな」
少女の挑発に男は顔を真っ赤にして怒っている。俺は木の上から見下ろしているが、少女の顔はよく見えない。年頃の女は泣いて許しを乞うはずなのだが。
あーあ、あれ危ないな……
今にも襲いかからんとする男は少女に向かって叫びながら迫っていた。
「口先だけってのはお前だろ」
気づくと二人の間に入り込み、男の腕をを握っていた。普通は仲間が逃げ出さないように残念だが囮役として少女には捕まってもらうのが通常だ。
だがなぜか少女が殴られるのは阻止しなければいけないと思っていた。
まぁ、仲間は手間がかかるけど他の奴らに探してもらればいっか……。
男を縄で縛る間も少女は強がっていながらも恐怖からか固まっていた。
小屋からも狐の気配が多数感じられる。その数からここが本拠地なのだろう。
振り向き固まる少女に手をかそうとした時、やっとその雰囲気に気がついた。
少女を見るだけで分かる神々しさに時が止まったように感じた。狐特有の雰囲気だけじゃなく、何というか……こう、逆らってはいけない存在。
でもその理由が出てきそうで出てこないため少しイライラしながら少女へ詰め寄り腕を掴んだ。
少女の意識は朦朧としており、揺らしただけで崩れ落ちてしまった。やはり怖かったのだろう。
でも、こっからどうすれば……?
こんな状況は初めてではないものの、この少女は何かがあるはずだ。どこかで休ませて話を聞くべきか…?
少女を支えながら唸っていると、木の上から仲間が降りてきた。

