「嬢ちゃんなかなかの上玉だな〜、俺の妾にしてやってもいいぜ!」

ガハハハハッと笑う男は柊を逃がすつもりは無いようだ。思ってもみない事に心臓がバクバクと鳴り、体は動けなくなった。


「ん〜どーしたんだ〜?逃げねぇのか?」

何か言わないともっとなめられてしまう。

勇気を振り絞り男を睨みつけて静かに話す。


「お前は……狐?いや、違うか。お前なんかが狐になれるはずがない。それと、言葉間違ってるけど?なにが人攫いだ。狐攫い…でしょ?」


先ほどの少女たちは人間とは違う雰囲気を持っており、気力を使い果たし耳や尾を隠せなくなっていたのだ。

「女子供を攫っていい気になるなんて、とんだ腰抜け野郎だな」

余裕があるように上からものを言うと、男は思ったより怒り出してしまった。


「ガキが何言ってやがんだ!口先だけのくせによぉ!」


憤怒の形相で迫ってくる男に柊は尾で体を隠そうとする。

………が、柊が尾を出す前にほのかにレモングラスの香りが漂ってきた。