あれ……わたし、何してたっけ…?

確か……宇久の手をとって……

ここ…どこ……?

柊は目をうっすら開けると地面の上に倒れていることに気づく。枯葉が敷かれ、木漏れ日がまだ辺りを照らしている。


「宇久……?」


返事はなし。


「さて、これはどういうことかな」


………取り敢えず人がいないか探そう。

あ、狐の村だったから狐か…。


人間の姿の方が何かと動きやすいため尾は出さずに歩き出す。

暗くなる前には会わないと…。

初めての外の世界には、不安と喜びが入り混じっていた。


当てもなく進んで行くと、誰かが通り何と無く道のようなものが出来ているのを見つけた。

途中木々に引っかかり服が所々破けていたが、気にせずその道をたどって行く。
慎重に進んでいくと一軒の小屋を見つけた。もう暗くなっているし躊躇はできない。


ーーーコンコン


「…………」


留守……?人の気配はするんだけどなぁ。

失礼だとわかっていながら窓から中を覗かせてもらう。

「なっ……!」

廃屋のように床は抜け落ち蜘蛛の巣がいたるところに張ってあり、埃だらけの部屋の中央に手足を縛られ口にまでロープを巻かれた少女たちの姿があった。

「誰がこんなこと…」

少女たちの目は希望の光を失い、虚ろに空中を眺めていた。

助けなきゃとドアに手をかけるが……

「なんで開かないの!」

ドアのノブはガチャガチャと音をたてるだけ。古く脆い家屋のドアは何かで壊せるかもしれない。


取り敢えず腕でドアを押していると、突然後ろから野太いしわがれた声が聞こえた。

「ん〜?誰だい嬢ちゃん。こんなとこで何をしてんだ。人攫いに連れて行かれちゃうよ〜」

バッと振り向くその先にはニタニタと気味が悪いほど笑顔の男がいた。年の頃は30後半といったところか。視線が全身を舐め取られるように見られて吐き気がする。