「こいつ、ファンクラブがあんねんで」
カレーを頬張りながら、サクラに向かって、タクトが言う。
タクトが指す顎の先に、サムライ君がいた。
サムライ君はそんなタクトを見やりながら、照れたような笑いを見せた。
「か・彼女はいるのですか?」
素っ頓狂な声で聞いてしまった。
聞いてしまって、恥ずかしさがお腹のあたりから、わき上がってきた。
「おまえ、何顔赤くしてんねん」
タクトの声で、ますます顔が熱くなった。
「いてへんよなぁ。サムライ」
「ファンクラブに掟があって、特定の彼女は作ったらあかんらしいで」
リーダーのキハチさんや、他のメンバーが口々に言った。
それじゃ、あの「ラウソン」で見かけた女の子は?
・・・・・聞けなかった。
だけど、これからは時々サムライ君に会える♪
そう思うだけで、ホカホカしたもので全身を包まれるような気がした。
スキップしそうになった。
鼻歌、なんてもんやなくて、大声で歌いそうになった。


