翌日、学校のトイレの入り口あたりで紗理奈に会った。
そしてトイレの中に引っ張り込まれた。

洋便器の蓋の上に座りながら

「見てェ」

紗理奈が制服のブラウスのボタンをはずす。

胸のあたりに小さな、花びらがたくさん浮き上がっていた。

「愛のシルシやねん」
紗理奈は言う。

「あんた、したん?」

「うん。したん」

「初めて会った人と?」

「うん。初めて会った人と」

昨日の続き、オウム返しな会話だった。

「あんた、知ってるぅ?
ホストクラブのトイレって、めっちゃ広くて綺麗なん。
そいでな、トイレの場所わからへん、ウチを流衣くんが案内してくれて
そんなことになったのよ」

「トイレでしたん?」

「途中までね。
続きは、流衣の部屋で・・・」

「お父さんやお母さん、心配しはらへんかったの?朝帰りやろ?」
あたしは聞いた。

「あんたは、ホンマに真面目やね~。
ええ子やわ」
鼻で笑いながら、紗理奈は続ける。

「制服は持ってでてたから、流衣くんの部屋から直行してきたん。

うちの家はみんな個人主義やねん。

他の家族に迷惑かからへんかったら
何をやっても、自由。

自分の始末は自分でつける。
それが、ルールやねん。

私が帰ってないことも、誰も気づいてないよ」

紗理奈は口だけで、ニーーーッと笑ってみせた。

目がクルリっとした。

なんだか、強がり、言うてるように見えた。