家に帰るとオカンが台所に立っていた。

弟たちはもう寝ている。

オトンは仕事。


「いつも、ありがと。美悠」
オカンが言う。

「ううん」
私は答える。

「あんな~、相談があんねん」

私の言葉に鍋を持ったままのオカンが振り返る。

「ええよ。
何の相談?
美悠が相談やなんて、珍しいねぇ~。

ちょっと、待っててな、この切り干し大根、味つけしてしまうから」


「はい。な~に?」
暖かいミルクティを差し出しながら、
オカンは居間に座り直した。

「あんな~
産んでも、ええ?」

ミルクティを両手で受け取りながら、小さな声で言ってみた。

「なん?それ?何、ウム~って」


私は座り直してもう一回言った。
「あんな、出来てしもてん。赤ちゃんが!
産むしな。わたし」

唇をギューーッてかみしめながら言った。

どれだけ時間がたったか解らないくらい
長い時間が流れた。