犬が去ったあと、私は怖さのあまり、見知らぬたーくんの胸でおいおい泣いた。

恥ずかしいという気持ちは、不思議だけど、ちっともおきなかった。

胸の厚みと、汗の臭いがお父さんみたいだと思った。

たーくんは、きっと困っていたと思う。

けど、優しく髪を撫でながら
「大丈夫だよ。大丈夫だよ」と
耳元で、囁き続けてくれた。

私は、小さな赤ちゃんになったような安心感で、おいおい泣いた。

体中の水分がぜ~んぶ、空っぽになるくらい。

そして、私たちは恋人同士になった。