この状況だと、土方には薫が飛び起きたことは、ばれていないだろう。


薫は未だに乱れる呼吸を落ち着けながら夢の事を考えた。





今までの夢は、日常の風景をただ眺めていただけだった。


しかし、今回は違う。


最後の一言と廉の瞳は、確実に薫に向けられていた。





そして廉は、薫を見ながら"郁"と名を呼んだ。


薫の記憶は戻っていないが、視線が交差したのは事実。


つまりは、薫の本当の名前は郁ということになるのだ。





薫「私は………郁、なの……………?」


尚も暴れる心臓を押さえながら、薫は呟いた。


しかし、その言葉は誰にも聞かれることなく空気となって消えていった一一一一一