それは一瞬で。 ハッと気づいた時にはもういなかった。 傘を持ってゆっくり立ち上がるとあたしは自分の家の方に歩く。 きっと、またあそこにいれば会えるよね。 その時に返そう…。 ぎゅっと傘の柄を握り締めてトボトボ歩く。 なんとなく、心の闇が取れた気がした。 これからもう1回、頑張ってみよう。 「よし…」 あたしはさっきの男の人の声や顔を心にしまって前を向いた。