三谷先輩以外、私たちの関係を知る者はいない。

もし誰かが知る事があるとすれば、

『結婚』する時だけだ。…この先に、結婚があるかどうかなんて、

まだまだ分からない。付き合い始めてまだ数日。

…でも今は、そんな事は考えないようにしている。

ただ、今この幸せな時間が、誰にも邪魔されず過ごせますようにと、

神様にお願いしているだけ。


…それからさらに数日後。

私の部署と、篠田部長の部署とが共同で仕事をすることになった。

…相変わらず、私と三谷先輩の噂が消えていない事もあり、

根掘り葉掘り、聞かれる事もあったけど、何でもない、

そう言っているうちに、その噂も少しずつ消え始めていた。


「おい、美穂。こんなところで寝てないで、帰って寝ろよ。

仕事はもういいから」

私を揺り起している三谷先輩だったが、私は全く起きる気配がない。


「・・・ったく」

三谷先輩は、そう言って大きな溜息をつくと、困ったように笑った。


「・・・お前は、無防備すぎるんだよ」

そう呟いた三谷先輩は、私にそっと顔を近づけた。

・・・・

・・・・・・


「・・・ん?」

「やっと起きたか、眠り姫」

「…ぁ、すみません」

顔に、何か触れたような気がして目が覚めた。