「…嫌いとか、憎いとかそういう“負の思い”はどうなるんですか?」


「そういったものは、“思い”でも何でもないわ。
どれだけその人を嫌いでも憎くても、こういった感情はその人の中できちんと消化しなければならない。
嫌いすぎて、壊れてしまうなんて事はほとんどないもの。

それに…もしも海音ちゃんに大好きな人がいたとするじゃない?
でも相手は海音ちゃんのことを凄く嫌いだったとする。そんなことを知ってしまったら、嫌でしょう?
自分のことを相手が嫌っているという思いが永遠に残るなんて耐えられる?」




ふうさんの言葉が頭に刺さった。
私は人を好きになったことがなかったのだ。







気になっていた先輩が以前にはいた。だがそれは友達とかっこいいだの、今日はどこで擦れ違ったなどと言っては盛り上がっていただけであり、“恋愛”という感情でないことを自分でも心のどこかで分かっていた。
恐らく、友達にとって先輩は単なる憧れではなく、本当に好きだったんだろう。