いつも沈黙のはずだった教室が、



なぜか、今日は誼譟で溢れていた。



教室の八歩手前で



二人は立ち止まる。



時々聞こえる、



『久留島』『モルテ』『消えろ』



の単語。



ひときわ大きく、



「このクソ真子!消えなさいよ!」



誰かの声が壁を突き破り、



廊下まで充分に響いてきた。



「…久留島」



綾介が呟く。



「多分、想像してる通りだな」



想像。



きっと、久留島は責められて、



怒鳴られて、



モルテ候補にあげられてる。



今日のモルテが誰か、確信できた。



久琉斗が教室のドアを引く。



__想像通りの教室内。



怒号が飛び交っていた。



教室の端辺り__



真子の席がある場所に



視線が集まっていて、



二人が入ってきたのに気づいた者は



いない。



真子の横暴によって



クラスメイトたちに



溜まっていた鬱憤が、



今日、晴らされるのだろうか。