自転車を自転車置き場に置いて、



しっかりと鍵をかける。



紅葉色の自転車は



秋にピッタリだ。



早足で改札口に向かうと、



久琉斗が携帯を弄りながら待っていた。



茶髪は良い意味で波打っており、



駅を通る女子高生らが



チラチラと振り返っている。



「はよ!そら、ヤクルト」



綾介は、鞄の中を探って



ヤクルトを久琉斗に投げた。



「おう、サンキューな」



久琉斗がヤクルトの蓋を開けながら、



話題を出す。



「なぁ、
シニガミチェーンメールだけど…」



「あれがどうしたんだよ。
怖いのか?」



「怖くはね〜な。ただ…」



「ただ?」



「嫌な予感がして」



久琉斗がヤクルトを口に運ぶと、



一気に喉に流し込んだ。



「嫌な予感って?当たるかよ」



綾介は苦笑しながら、



ヤクルトを少しずつ飲んでいく。



二人揃ってゴミ箱に入れると、



電車に乗った。



ラッシュアワーをやや過ぎた電車内は



ガラガラとは言わないまでも



座る席くらいはある。



「だってよ、
死神があの世へ連れて行きます、
ってんだぜ?
殺されるって事じゃねえか」



久琉斗が顔をしかながら、



不安げに言う。



「罰ゲームじゃねえの?」



「なんか引っかかるんだよな…」



久琉斗が頭をかいた。



「まぁ、ただのイタズラだろうけど」



「心配する事ね〜って。
クラスの誰かがふざけてんだよ」



綾介も確かに、



少しの不安は感じていた。



あのメールは



普通の迷惑メールとは違って、



狂気が感じられた気がしたのだ。



でも、口には出さない。



「まぁ、な」



「大丈夫だって、
そんなのが本当にあったら今頃、
人間がバタバタ死んでるっつの」



「だよなぁ」



ガタン__ゴトン__



呑気に電車は進み、



やがて、綾介達が降りる駅についた。



シニガミチェーンメールとは



関係のない話が、



二人の間で始まっている。



ただ、二人の手は時々、



ポケットの携帯を触り、



訳の解らない恐怖に操られるように



握り締めていたのだった__