二十四人は、耳を疑う。



おとなしい性格の義乃の口から



綯われたのは、



想像できない言葉だったからだ。



「…義乃、今、なんて?」



裕美子が信じられないとばかりに、



義乃に聞き返す。



綾介の隣の席に居る義乃は、



いつものような弱々しい笑顔ではなく、



自信に満ちた表情だ。



「聞こえないの?
あんた、馬鹿じゃないかってこと」



あぁ、また人間関係が崩れるんだな。



綾介はそんなことを思い、



二人の会話を聞く。



シニガミチェーンメールが始まってから



すでに、四日目だ。



人間関係にボロが出てきて



もう絶交した者も居るらしい。



ほら、ここにも。



もう絶交する人間関係が一つ。



「馬鹿、ってどういうことよ」



「解らないの?
もう、私はあんたの
腰巾着なんかじゃないし、
他の皆も、
あんたに従うのは嫌なんだってさ」



裕美子の目がみるみる釣り上がる。



「義乃、
今までの恩を仇で返すつもり?」



「恩?そんなの、感じたことないけど」



「ふざけないで。
一人ぼっちだったあんたと
友達になってあげたじゃんか」



「あれが友達?」



義乃はあくまでも余裕のある態度で



女子軍リーダー____



元・女子軍リーダーと対する。



気づいていないのは裕美子だけで、



女子は全員、



裕美子を嫌っていた。



義乃もその一人。



「やれこうしろ、あれをしろ。
命令ばっかで、なんなの?って感じ。
仲の良いフリしてたけど、
もう堪えらんない。
あんたがモルテになれよ」



シュッ____



何かが、綾介の頬をかすめて、



義乃に向けて投げられた。



綾介は、義乃と左隣りで、



裕美子は、クラスメイト三人を挟んだ



右隣り。



誰が投げたかは一目瞭然。



投げられたのはピンク色の消しゴムで、



義乃の胸に当たって落ちた。



「…ムカつく。
誰に向かって口聞いてんの?
またはぶかれたいのかよ、お前」



裕美子が鬼の形相で義乃を睨むのに



反対して、



義乃は余裕綽々たる様子で



そんな裕美子に



ゆっくりと言葉をかける。



「その口調と態度が、ムカつくの」



その時。





♫ピロロロロン♫





場に不似合いな音が、



久琉斗の携帯から鳴った。



「…っ…」



久琉斗が恐れるように



携帯を操作して



メール着信画面を開く。