特に会話を交わす事もなく、



電車に乗り込む。



動き出して数秒経ってから、



久琉斗が口を開いた。



「…なぁ」



「ん?」



「最初にきたシニガミメールにさ、
『では、ずっとこのまま、
仲の良いクラスでいる事を、願います』
って書いてるだろ?」



久琉斗がメールを見ながら



無表情のまま、言う。



「…書いてたな」



「クラス…崩れてきてるよな」



「…は?」



綾介が久琉斗の整った横顔を見た。



「だって、女子軍リーダーの橋詰が、
渡辺をモルテにしようぜって
言ってたじゃね〜か。
前までは、
関わることすらなかったけどよ。
それは言い換えれば、あいつを消そう、
ってことだろ。
そう思ってたやつも、
少なからず居ただろうな。
死神の思惑のまま」



「…」



「もう、クラスは崩壊し始めてるな」



久琉斗は無表情で言い放つ。



「…久琉斗、
今日のモルテは誰だと思う?」



岡沢?



渡辺?



園田?



いく人もの人間が、



綾介の心の中の候補台に上った。



「橋詰」



久琉斗が即答した。



綾介はそれに疑問を持ち、



片眉を下げる。



「橋詰?なんでだよ」



「ちょっと考えたら解るぜ。
あいつ、でしゃばりって
陰口叩かれてんだよ」



「…そうなのか」



「しかも、
渡辺を消そうって持ちかけたし。
橋詰に送ろうって奴、多分居ない。
最初が橋詰って可能性もあるけど、
二十五分の一だろ」



「なら、モルテは橋詰…」



綾介はその事が解り、



目をつぶった。



…このゲームは、残酷な上に、



人間関係まで露わにするんだな。



モルテになった奴は、



嫌われてる奴が殆ど。



赤崎は…例外だけどな。



仲の良い奴が



自分を選んでくれなかったら、



裏切られた感MAXだろうし。



それを見た他人が、



そいつ等を信じられなくなる。



糸が複雑に絡まった残酷なゲーム。



それを綾介が痛感した時、



電車は駅についた。