家に帰って、



家族と会話を交わすこともなく



綾介はドタッとベッドに寝転んだ。



右手を顔に当て、



花香の笑顔を思い浮かべる。



ずっと恋心を抱いていた、綾介。



赤崎…



あんな告白しかできなくて…



…ごめんっ…



すまないという気持ちと、



悲しみが綾介の心の中で



黒く濃く渦巻いてゆく。



いつの間にか、



綾介は泣いていた。



「あかっ、赤崎ぃ…うっ…ごめ…っ」



シニガミが、憎い。



十分__二十分。



泣き終えた時、



綾介は心に決めた。



絶対に…



赤崎の分も、生きてやる。



花香の死を、



ほんの少しだけ、



受け入れることが出来た。



綾介は多少晴れた面持ちで



一階に下りていく。



「あ、お兄ちゃん下りてきた〜!」



妹、美結が、



屈託ない笑顔で、綾介に近寄る。



綾介はなんとも言わないまま、



ソファに寝転び、



静かに寝息をたてた。



また、明日になれば



誰かが消えるということを、



無理やり心の中に押し込んで。



それが自分じゃないという可能性は、



けっして高くはない。