綾介と久琉斗は、
教室に着くまでの間、
一言さえも言葉を交わさなかった。
交わす事が出来ない。
さっき感じた恐怖が、
二人の身体に焼き付いているのだ。
教室の五歩手前まできた時、
教室内は
騒然としていた。
「井上が死んだって!?」
「誰か屋上見てきてよ!」
「シニガミチェーンメールは
本物なんだ!」
「確か、間君と神楽君が…」
ガラッと教室の扉を、
綾介が力を込めて開けた。
久琉斗が、茫然自失とした状態で、
瞳に涙を浮かべている。
久琉斗と玲二は
親友のような関係だったのだ。
全員の目が、二人に向く。
期待と恐怖の交じる二十五の視線。
綾介が、扉に手をかけ、
ドアを開けたまま、
答えた。
「井上は…消えたよ」
「玲二…うっうわぁぁぁあ!!」
久琉斗が、
教室前の廊下で膝をつき、
泣き叫んだ。
瞬く間に、教室の中は、
絶叫の渦に巻き込まれた。
激しく泣き叫んだのは
久琉斗と
暁美だった。



