壁にかけられた時計は、
無機質な音を響かせる。
「…石川、
早く決めないと、消えるぞ」
久琉斗が、
新太に聞こえるように、
やや大きめの声で注意を促した。
あと二十秒もない。
新太は明後日の方角を向いて、
何かをブツブツと呟くだけだ。
「…いしか…」
綾介が何かを言いかけた瞬間。
「神楽…何も言うな…」
新太に対する救いの声を、
裕理が、
断ち切った。
「そのまま石川が
消えることに気づかなければ、
僕は生きられるんだから…」
「…は?…お前…なに言って…」
綾介が、揺れた声で、
言おうとする言葉を、
笠山 悠が遮った。
「そうだ!…屋良君の言う通りだ!
石川が消えれば良いんだ!」
「屋良、笠山…」
綾介が二人を睨みつけた、時。
カチリ。
時計が、長針を動かした。
__十分が経過した__



