七時に母に起こされて、
綾介は一階に下りる。
美結は今日も元気に、
ニコニコと笑っている。
そんな美結を見て
綾介は複雑すぎる思いを抱えたまま、
駅に向かった。
玄関を出る前に、
冷蔵庫を弄ると、
二つのヤクルトを鞄に詰めて、
自転車に乗り込む。
自分でも馬鹿らしいとは思ったが、
なぜか、
持って行きたい気分になったのだ。
空は昨日とは違う快晴。
雲は一つもなく、
太陽は優しく町を照らし、
綾介の黒い髪を際立たせた。
駅に着くと、
久琉斗に鞄の中から出したヤクルトを
軽く投げる。
「…おはよ。そら」
「…ん?ヤクルト…か。…あんがと」
久琉斗は一気に飲み、
綾介は少しずつ飲んでから、
屑籠に放り込む。
教室につくまで、
二人は一言も喋らなかった。
胸が締め付けられるほど、
嫌な予感がしたからだ。
綾介は息苦しさを押し殺す。
__今日、何かがある。
確信した。
胸騒ぎを感じながら、
教室の扉を開けた。