「えっ?何?これ?」

足元の白い雪の上に、点々と真っ赤な血がついていた。

「なっ、脚が切れてるじゃないか。」

私は寒すぎて痛みが感じられなかったのだ。

「座って、俺がみてやる。」

私の白いウエアのちょうど左膝下に5cmくらいの切れ目が真横に走り、

血が流れていた。

「痛い?」

「い、いいえ、寒くて感じなかったから。」

「歩ける?」

「はい、でも血が止まらないわ。」

彼はゴーグルとマスクを顔から引っ剥がして雪の上に落とし、

ウエアのポケットから大きなバンダナを出して広げた。

私の傷口にタオルを当てて、その上からバンダナで縛った。

「よし、ロッジへ戻ろう。俺が担ぐからカメラを斜めにして俺の背中に乗るんだ。

しっかりつかまってろよ、飛ばすから。」

彼は本当に飛ばした。

私は鼻と頬が凍りそうだった。