ザザァッ、ズザッ。

と、いきなり進行を遮られた。

「キャッ!」

私は尻餅をついた。

「な、何?」

辺り一面に雪がサッと舞った。

「君は、こんな所で危ないじゃないか!」

突然怒鳴られて、びっくりした。

私はカメラの無事を確認した。

「ああ、良かった、大丈夫、大丈夫。」

と、一人でぶつぶつと言った。

「どうした?どこか打ったのか?ほら、立って!」

私は差し出された手を見て、相手がスノーボーダーだとやっと気づいた。

「ありがとうございます。」

「君はなんでこんな所にいるんだ?危うくボードで引いちまうところだった。」

「すみません。」

「おまけに、上から下まで白じゃないか、雪と見間違われても文句言えないな。」

「すみません。私の不注意でした。申し訳ありません。」

ゲレンデから外れていても、スノーボーダーなら充分滑走できる場所だった。

彼は長身で、全身真っ黒だった。

マスクやゴーグルも黒だ。

ちょっと不気味だった。

「こんな外れで何やっていたんだ?迷ったのか?」

「いえ、白うさぎを撮っていました。」

私はカメラを両手で掲げた。

「へぇ、うさぎなんているんだ。

俺も見てみたいが、取り合えず君にケガがなくてよかった。」