「あ、桜本ばいばい!」



「へっ!?」



速川くんにいきなり挨拶されて肩が跳ねる。



「え、桜本………だよな?」



「あ……うん!」



速川くんと話すのは今日が初めてだ。
まさか、私みたいな地味なヤツの名前を知ってくれてるなんて……思ってもいなかった。



「よかった。じゃあな、桜本」



速川くんはそう言って爽やかな笑顔で私に手を振った。



ドキッ―――



や、ヤダ私ったらなんでドキッとして……。



「さ、さよならっ」



恥ずかしくなって慌てて教室を出た。



「はぁ……っはぁ……っ」



慌てて美術室に駆け込むと、美術部の唯一の部員の1年生、岡田聡也(おかだとしや)くんがいた。