君に、メリークリスマス






「ずっと…考えていました。貴方に…会いに行こうかと。ですが……彼の葬儀の時も、あなたは終始俯いて。涙ひとつ…見せませんでした。」



「……。マスターは…私を知って…?」



「いいえ、このとき初めて…貴方に会いました。兄弟はいないはずなのに、同い年くらいの女の子が親族席で、ずっと…何かを堪えるようにしている姿を見て、貴方だと…確信したんです。頑固で…素直じゃない。彼からそう…聞いていたから。まだ、彼の死を…受け入れていなかったのでしょう。……違いますか?」



「……………。」



「彼は…、あなたは自分の信者なのかもと…言っていました。彼の戯言を…信じた訳ではありません。でも…、もしそうならば。いつかは…貴方は、彼の死に向き合って。ここに来るかもしれない、と、彼が引き合わせてくれるんじゃないかと、思うことにしたんです。だから……貴方がここにきたのは、彼の…思惑通りで。運命です。いい加減使命を果たせと…言われたみたいです。」




「………使命…?」



「その指につけてるのは…なんですか?」




マスターは、私の手をとって。



その、指輪に…触れる。





「これは……、彼から、リョータから…イヴの朝に届いたものです。」




「………。うん…。この石は…ローズクォーツ…。」




「…………。」



「優しさと愛の…象徴です。不器用な彼からの…精一杯の…愛情。」







優しさと…愛。






「つかささん。もう一度…この店をよーく見てください。」



「……え?」



「貴方は…気づきませんか?」



「…………?」







マスターに言われた通りに……




私は、じっと……


店内を見渡す。










視線が…、ある一点に、釘付けになる。