「彼はイケメンでしたから、女性にはモテていて…なのに、特定の人を作ろうとはしませんでしたし、ここに来るときはいつも…一人でした。だから、ある時…聞いたんです。女性に興味がないのか、と……。返事は、彼独特の返しでした。『男には興味ない。それから、興味がある女は、どう扱ったらいいのかわからない。』」
「……………。」
「あんなに器用で、自信に満ち溢れた男が。たった一人の女性に翻弄される姿が…意外過ぎて、いじらしくて、僕はからかってしまいました。まあ、ウザがられましたけどね。」
私が知らない頃のマスターと、私の知らない彼の友人とが掛け合う姿が……
ぼんやりと、脳裏に浮かんでは…消えていった。
「一本気な性格は、恋に対しても…一途だったんです。」
「…………。」
「彼はそこから…彼女のことを、よく話すようになりました。彼曰く、彼女はとても頑固で…素直じゃない。だけど、多分彼のことだけは信じている、かわいい人だ、と。」
『可愛い人だ、と。』
マスターが放った言葉のトーンに。
少し…懐かしさを感じた。なぜかは、わからないけど…。
また、遠くを見つめる目…。
彼が言う友人は、今…近くにはいないのだろうか。
「もの作りが好きだったので、ここにも…何かを作っては、持ち込んで来ました。」
「…あ!前に言ってた…?」
「はい、ここにあるものは……彼の手によって作られたものが…ほとんどです。いつか、この店の側に小さな雑貨屋でも開いて貰おうかと僕は目論んでたんですけどね。彼はどうやら…そう言う欲はなかったようです。ただの…自己満足。ひとつ言うなれば…一人の女性を喜ばせたい、…そう思って、始めたことだったんです。」
「…………。たった一人の…為?」
「…ええ。……彼女は、サンタクロースを信じていなかったと聞いています。もしかしたら、クリスマスを嫌っているかもしれない、と……。ですから彼は、彼女に何かをしたいと考えて…、毎年、悩んだそうですよ。自分には、簡単な小物を作ることしかできない、だからそうして来たけど……。どうやったら、気持ちを繋ぎ止めることができるのかが、わからなくなったんだっていっていました。彼女とは…、幼馴染みだそうです。ずっと、隣にいたのに、彼女に関してだけは…大事過ぎてどう扱ったらいいのかがわからなくて。…その席で…愚痴を溢してました。」
「………おさな…なじみ……?」


