「マスター、貴方がこれを差し出して来たとき…。私は正直、動揺しました。」
「ミルクティー、ですか?」
「はい。私はどちらかと言うと甘党ではなくて…、紅茶だって、自分で選べばストレートを頼んだと…思います。なのに…、これが来た。よりによって…忘れられない、大事な人が好きだった…ミルクティーが。」
「…………。」
「私…、クリスマスが嫌いだって言いましたよね。ここには、そんな面影が…ない。だから、油断してたんだと…思います。来るたびに…、彼のことを思い出しました。不思議ですよね…、彼は、もういないのに。死んでしまったのに。驚くくらいに鮮明に…溢れて出て来るんです。悲しいのに、綺麗な思い出だけが……。懐かしんでしまっている自分がいました。自分の気持ちも…伝えられなかった癖に。彼の思いも…受け止められなかったのに…。」
「……………。」
「マスターは、ちょっとだけ…彼に似ています。多分、それに気づいて…逃げ出したくなりました。あの日…、クリスマスに、彼が事故に遭って亡くなったことを…思い出しそうになって。……逃げたんです。」
「…………。」
「彼は、幼馴染みでした。いつも…何となく、一緒にいました。私の実家はお寺で…クリスマスとは全くの無縁で。でも…彼が、一緒に居てくれました。サンタに代わって…、いろんなものを、私にくれたんです。死んでしまったその日も。私に…会おうとしてたんです。」
「………。……つかささんは、その方を…好きだったんですね。」
「はい、多分…、大好きでした。」
初めて…言葉にして言った。
私は……
君が、好きだったと……。


