その、重い扉を開くと…。
来客を告げる鐘の音が、カラコロと…響いた。
「………。いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
出会った時と同じ瞳で……
何もかも悟っているくせに。
同じ台詞を…言ってのけた。
「……マスター、貸しきりじゃなかったんですか?」
「貸しきりですよ?今、予約のお客様が来ましたから…。」
「約束は…してません。」
「でも、来たじゃないですか。」
「……………。」
「……コート、お預かりします。」
立ち尽くす私の後ろに立って…、
彼は、コートを外す。
「いいもんですね。」
「……え?」
「まだ昼間だから、あなたの顔が…よく見えます。」
「………。……そうですか。」
店内が…いつもより明るい。
照明の光と、
太陽の光とでは。
人の印象を……随分と変える。
マスターが微笑んだその顔が。
幾分か…、幼く見えていた。


