ミサにいくら忠告されても。
まだ…実感など湧いていなかった。
新しい…生活。
見るもの全てが…新鮮で。
過去を省みるよりも、
目の前の世界が…楽しかったから。
だけどそれも…、長くは続かなくて。
ふとした瞬間に…
思い出してしまうのだった。
「わあ……、見てリョータ、凄いキレーだよ!」
海に沈む夕陽の、その見事な…オレンジ色に。
そんな言葉が…溢れ出した。
「え、リョータってダレ?」
「……あ…、ごめんなさい、つい……。」
ゼミの仲間達との、交流キャンプに来ている時だった。
隣りにいた、1つ年上の原田先輩が…眉を下げて、ははっと笑い飛ばした。
「……スミマセン。」
「いいって。てか……、ちゃんといるんだねー本命。近寄る男、一刀両断だったでしょー?みんな気になってたんだよね。」
堤防に肩を並べて…
夕陽を眺めながら、彼は言う。
「………。そんなんじゃ…ないです。ただ、一緒にいる時間が長すぎて……。」
「………ふーん。彼以外には、興味がない?」
「そんなことは、ないんですけど…。なんていうか、私には他の引き出しがないって言うか…。」
「へえ…。なら、ためしてみる?」
「ん?」
「他の引き出しみつけられるか。」
「…………?」
「一瞬にして、他のこと考えられなくなるかもよ?」
「……………。」
一瞬…だった。
原田先輩の唇が…
私のおデコに触れたのは。
「……どう?」
「……な…、な、何してるんですかーっ!」
どんっと…彼の胸を押して。
手でおデコを覆った。
「みんな甘いんだよ。そんなの…追い出せばいーのに。埼に住みついているヤツを。俺なら…葬ってやるよ?」
二度目は……
唇に。
強引なのに、避けようとしなかったのは……
どこかで、試したかったのかもしれない。
君を忘れられないだなんてこと…ないはずだって。
押し寄せて来たのは…
罪悪感。
……それだけ。
原田先輩のキスで…
君を思い出すだなんて。
自分がいかに浅はかで、愚かだったかと……
気づかされただけだった。


