「大丈夫ですか?」
そんな声に…、ハッと、我に返る。
「気分が悪そうですね。ここ、少し…暖かいので…、外の空気でも、吸いにいきませんか?スッキリするかもしれませんよ。」
マスターの心配そうな瞳が、
君の焦げ茶の瞳と…重なって見えた。
「…………。」
そうだ……、
この人の、雰囲気は。
どことなく…似ていたんだ。
そう……、君に。
「……嫌です、外には…出たくありません!」
「……。……なぜ?」
「………!」
「なぜ、そう思うんですか?」
『なぜ?』
だって…、
ずっと、君の影が…ちらつくんです。
どこかに、面影を…探してしまうんです。
君が笑っている、そんな…綺麗な思い出だけで…
いいのです。
「……貴方は、何から…逃げようとしているのですか。」
ホラ……、やっぱり。
興味がないふりして、干渉もしないくせして、
核心ばかりを…突いてくる。
君と…貴方は。
とてもよく…似ている。
「クリスマスが…嫌いです。浮かれてしまっていた自分も…嫌いです。」
「………。……そうですか。」
聞いてきた癖に…
結局、無関心。
癒しと思っていた、この落ち着いた雰囲気が……
今は、鼻についてしまう。
何もかも見透かしているかのようで…、
余裕で……
アタマに来る。
「お名前…、まだ聞いてもいませんでしたね。聞いても…いいですか?」
「………。埼です。埼…つかさ。」
「……。つかささん。貴方は…、僕の知り合いに、よく似ています。」
「………。」
マスターの、知り合い…?
「強くて…、頑固で、なのに…本当は、弱い…人間。だからでしょうか、どこか放っておけないのは。」
「……え……?」
マスターの、優しい視線が…真っ直ぐに、私へと向けられる。
いや……、
彼が見ているのは。
私に重ねている…「その人」の方なのかもしれない。
きっと、女の人…なのだろう。
私が、彼の瞳に…君を探してしまうのと、同じで…。
彼もまた、過去の呪縛に…囚われているのだろうか。
「つかささん。前に…聞いてくださいましたね、クリスマスに店を開いているか、と…。」
「………。」
「予約しておきます。ですから…、来てください。……必ず。」
「………。約束は…できません。」
「それでも、……待ってます。」
「なぜ…ですか?」
「貴方に、ちょっと興味が…あるからです。」


