君に、メリークリスマス



イヴのごちそうに、肉まんを頬張る男女は…


もしかしたら、私達だけかもしれない。




そんなことを考えながら、半分こに割った肉まんを…がぶりと一口…頬張った。




外は……うっすらと、雪化粧。




肉まんを持つ君の手は…真っ赤で。

それから、鼻先も…赤くなっていた。





「腹減ってコンビニに買いに行った帰りに…お前の部屋、電気ついてたから…。頑張ってんな、受験生。」


「……。まあねー…。」




年明けには、センター試験が控えている…私。




一方の君は、早々にAO入試を済ませて。


丁度1ヶ月ほど前に…

芸術大学への入学が、決まっていた。




真っ先に、

揺るがなく……


自分の進むべき道を見出だして。



夢を叶える第一歩を…踏み出した君に、




したいことも見つからぬまま…ただ、何となく大学進学を目指す私は。


置いてきぼりにされたような…複雑な気持ちだった。





境内に置かれた、真新しいベンチ。


私達は雪を払って…



そこに、肩を並べて座っている。




1カ月前に…

君が作ったベンチ。




馴染みの宮大工に習いながら…出来上がっていくその工程を……


私はやっぱり隣りで…じっと見ていた。






真剣な…瞳。


物作りするときの君は…



私を見ない。


心は真っ直ぐに…


手元にある、ソレへ。





小さかった手は、いつのまにか…骨張った、大きな手に。



命を…吹き込んでいく。