君に、メリークリスマス



高校1年生のキス。




ファーストキス。










それから……


やっぱり私達の関係は、変わらなかった。


変わろうと…しなかった。








長年、築き上げてきた…

この、ちょうどよい関係が。

崩れてしもうことを……恐れていたのか。






流されたっていいと…


思っていたのか。






私は君にとっての、唯一無二の…



特別な存在になりたかったのか……。

















2度目のキスも……



君とだった。



高校2年の、クリスマス。




今度は、君の部屋で。


電気を消して、真っ暗になった部屋に…


テレビの明かりだけが、ぼんやりと浮かんで。

見ていたのは…ホラー映画のDVD。



「ぎゃっ…!」


と…

あまりの恐怖から、叫び声を上げた私に。



チュッと…音を立てて。








……不意打ちだった。








今度は…お酒の香りはしなかった。


かわりに、



ほんのり…優しい味がした。


君が、ミルクティーを…、飲んでいたから。















3度目は……




高校3年生。





……真夜中。


受験勉強に追われて、クリスマスの気配すら目に入らなかったその年…。


机に頬づえついて、うたた寝していると……。



窓に、どんっと、何かがぶつかる音がして。



私は、目を覚ました。





部屋のカーテンを開けると、ガラス戸に…

雪の跡。





外を見下ろすと…そこに、


こちらに背を向けて歩く、君の…後ろ姿。




「………なーにー?」



その背中に…叫んでみる。





不意に振り返った君が…



こっちを見上げる。





「……。見つかったか。」





「………?え~?」





「サンタ、来たか?」




「………。はあ?」









マフラーをぐるぐる巻きにして。


なのに……コートも、手袋もつけてなくて…。



白い息が、フワッと…舞い上がった。




「………。なんでもない。なあ……、肉まん、食おう。」