「………。………昔、友人に、そうやっって何でも作ってしまうような人が…いました。」
「…………。」
「小さい頃から、絵を描くのが得意で、スラスラと……自分の思い描く世界を描いては…いつもいつも、私を引き込もうとしちゃうんです。いつだったかは、朝顔の蔓でリースを作って。クリスマスに…持って来ました。」
「………へえー…、リース。素敵ですね。」
「………私は…一度もその人に、『すごい』だとか、『上手だね』とか…、誉めたことはありませんでした。驚くばかりで、嬉しくて…『ありがとう』って言うのが…精一杯で。……才能に、焼きもちを妬いてたのでしょうか…、何も取り柄のない自分を、惨めに感じてたのかも…しれません。」
「………………。」
「あの人が持っているものは…、私にはない。」
「『ありがとう』は、最上級の誉め言葉です。その人は、やっぱり…幸せ者ですよ。だって、そうやってあなたに…見せ続けていたのでしょう?才能を。」
「……………。」
「嬉しかったんでしょうね、『ありがとう』の一言が……。」
「………………。」
「………ミルクティー…、冷めますよ?」
あの時………、
リースを貰った時。
私は…どんな顔をしていたのだろうか。
君に、ありがとうを……
伝えられたのだろうか。


