「……ん。」
作業が終わりに近づいて来た頃…。
君が私の前に、腕を伸ばした。
「……なに?」
「お前にやる。」
掌の上に置かれたのは、丸められた…ティッシュ。
「ちょっ…、汚い!」
「ああ?!テメー…そん中よーくみてから言えや。」
「ん?」
丸まった…ティッシュの中身。
そっと開けたそこから…黒い小さな粒が、沢山姿を現した。
君から渡されたのは…小さな小さな、朝顔の種。
「……ありがとう。」
「ん。来年は、もっと綺麗に…咲かせろよ?ちゃんと、手入れしてな。」
「……あは、わかった。…あ、ねえ、この蔓…どこに運ぶといい?」
「……。………いい。あとは俺がするから。」
「……そう?じゃー、……コレ。」
種と引き換えじゃないけれど…、私は君の手に…缶のミルクティーを手渡す。
「お疲れ。」
「……お疲れ。……って、気が利くじゃん。どーした、これ。」
「…飲もうと思って買ったけど…、もう温くなったからあげる。」
「………?冷やしてから飲めばいいじゃん。」
「いいから!……あげるの。」
「……。……お前、ストレート派じゃなかったっけ?」
「違うの飲んじゃ悪い?」
「や、珍しいな…って。…サンキュ。」
本当は…、ちょっとした、罪滅ぼしだった。
だって、私は…冒険などしない。
君は甘党で。
ミルクティーが好き。
私が知らないはずもない。


