こういう時、家が隣りだと…
不都合だな、と思った。
私が、君の帰宅に気づくのと同じで…
きっと、君にも…気づかれてしまうから。
仕方なく、街を意味もなくぶらついてから帰ると……
オレンジ色に染まった空の下。
君は、自宅のベランダにしゃがみこんでは…何かしていた。
「………。なに…してるの?」
「……。…よお。随分早い用事だったな。」
頭に巻いたタオルから、汗が一筋…流れていた。
「緑のカーテンとかって、朝顔植えんのはいーけどさー…。満足するとほったらかしにするんだよな、あの人は。どーすんだよ、こんなに蔓延ってんの……。」
「……。……ああ、朝顔…。」
8月初めには、鮮やかな青い花を咲かせていた…朝顔。
もう、種が出来ていて。
蔓もだいぶ…茶色くなっていた。
「網に絡まってんの、すげー取りづらいし。」
「……。…ハサミで切ればいいじゃん。」
「……バーカ、それじゃあダメなんだよ、バーカ!」
「…ちょっと、バカバカ言い過ぎ!」
「………ばーか。」
最後のバカは、力が抜けていた。
「そんなん言うならなあ、お前も手伝えや。」


