あまりにも、唐突な出来事に…。
穴が開くんじゃないかってくらいに…
じっっと、君を見つめた。
「……ん?」
君は首を傾げて…、
全く悪びれない様子。
「はよこいって。」
手招きして…
君が……不意に、笑った。
「あれって、橘涼太?」
東次が、怪訝そうな顔して…聞いてきた。
「うん。あれ?知ってるの?」
「……ふーん、あんたら、まだつるんでるんだ?」
「……へ……?いや、全く、全然だったけど…。」
「昔、クラブが終わる時間くらいにさ、時々…犬の散歩だっつって、コートのそば通って…、碕んとこ連れ帰ってたじゃん。」
「………。………そうだった?」
「うん。」
「……………。」
そう……だった?
記憶というものは、いつも曖昧で……
留めているものと、
忘れるものと、
すり替えられるものと……。
私にとっての君は、
果たしてどれなんだろうと……思う。
手招きする君は、まるで側にいることを許したかのように………
昔と同じ笑みを、
浮かべていた。
コドモには戻れなくて。
でも…、大人にはなりきれなくて。
そんな、思春期を…越えた瞬間だったのかもしれない。


