家でこんなに嫌味言われるくらいなら、早く家を出たい………。
俺はコイツらの言う通りに、線路に従って歩きたくないだけだ。
リビングを出ようとする俺に父親は、さらに話し掛けてくる。
「伊月。……このお嬢さんはどこの会社の令嬢だい?それ次第で考えてやらないこともないが……」
「どこの令嬢でもないです。俺が初めて心から好きになったヤツ」
俺がそう言うと、父親の顔色が変わった。
俺には……まだ恋華に言ってない秘密がある。
きっと、そのせいで父親は機嫌が悪いはず。
「お前には自由に相手を決める権利はないんだ。分かるね?」
「分かりません。好きになる相手ぐらい俺で決めます」
「まぁ、せいぜい相手を傷付けないことだな。お前に婚約者がいることを知ればさぞ傷付くだろう」
「それはっ……」
ダメだ。
恋華には絶対に言えないし、知られたくない。
俺が物心ついた時からいる『婚約者』の存在。

