「失礼します。……入りますよ」
「……入れ」
金色の装飾が施された父親の書斎。
デスクには山積みの会社の資料。
父親はデスクの椅子に座り、俺に背中を向けたまま話した。
「今年の誕生日パーティー……彼女だけ招待しなさい」
「彼女とゆうのは……恋華のこと、ですか?」
「そうだ。この招待状を明日にでも彼女に渡すといい」
振り返った父親は俺に真っ白の便箋を渡す。
中身を確認すれば、確実に誕生日パーティーの招待状だ。
ただ……恋華だけを招待することが腑に落ちない。
腹の底ではドス黒い何かを企んでるはず。
「……誕生日パーティーに…菫は来るんですか?」
「当たり前であろう。息子の婚約者を呼ばずにどうする」
「それなら……恋華は呼びません。つーか……呼べません」
「それは聞けないな。一人でも欠ければ、このパーティーは始まらない……」
逃げ道はなさそうだな……。
悔しい……。