とは言っても、結局は伊月くんの背中にしがみついてしまうのです……。


そんなあたしを面白そうに見詰める翔大くんは優しくあたしの手を取った。


「細くて小さいかわいい手……守ってあげたくなるね」

「しっ、翔大くん…!?」

「俺だって……恋華ちゃんと話す度すげぇ緊張してんだよ?」


あたしの手をゆっくりと自分の胸元に当てた。


ほどよい筋肉の内側から、やや高めの心音。


あたしまで……ドキドキしちゃう……。


つい体が硬直する。


伊月くんがパシッとあたしの腕を掴んで、やっと我に帰った。


ヤバイ……どうして翔大くんにドキドキするの?


「よそ見してんじゃねぇよ!生意気に目移りか?」

「伊月さんいるのに俺にドキドキしてんの?悪い子」

「あ、あたし……ケータイ取って来ます!!」


こんなイケメン王子二人に迫られるなんて……


夢でも見てるのかもしれない。


廊下を走って乱れる呼吸で、現実だって理解する。


もう……ドキドキさせないで!