「…んで…」

なんで、

「好きな子…いるくせに…っ」

キスなんてするの。

期待させないでよ。

「私を…哀れんでいるの…?
私が、虐められてるから…!?」

教室は息ができない。

浴びせられる罵声と、向けられる好奇な目。

だから、ここに1人でいたのに。

もう、1人でも平気だったはずなのに。

私の心に、彼は簡単に踏み込んでくる。



「同情なら…慰めなら…いらない…っ」

「違う!!」

ビクリと、身体が跳ねる。

初めて聞いた、彼の大声。

「好きなんだ…」

痛いほどに強くなる腕の力。

「麗が好きだよ…っ!」

ドクドクと脈打つ鼓動は、一体誰のもの?

「わ、たしも…好き…っ」

涙と一緒に溢れ出した気持ちと言葉は、きっと止まることを知らない。

「え…?」

「好き…、大好き…!片岡、明が…っ」

「……っ!!」

「大好、き…っ」