「片岡…明…?」

どうして、なんで。

そんな言葉ばかりが頭を渦巻いて、泣きそうで、言ってしまいそうで。

「…ごめん」

身体を強張らせている私を抱きしめる彼の顔なんて、見られるわけがなかった。

なんで、謝ったのかとか、どうして抱きしめているのかとか、考える前に。

気がつけば、彼の顔が目の前にあった。




唇に感じる、先ほど掌に感じた熱と感触。

目を瞑った彼の長い睫毛と、白い肌が目に入った。

「んん……っ」

なんで、私は…片岡明にキスされてるの…?

頭がそれを理解したとき、反射的に逃げようとしたけど、後頭部に手が添えられていて動けなかった。

「やっ…!」

首を振って、唇が一度離れたけど、また塞がれる。何度も、何度も。

流れた一筋の涙が、私の頬を濡らした。





どれくらい、そうしていたんだろう。

すごく長かったような気がするし、ほんの数十秒だったような気もする。

ふと、彼が私から離れて、私はすごく切なくなった。

いつの間にか瞑っていた目を、そっと開けようとしたとき。

また、抱きしめられた。