山路さんが悪いわけじゃないけれど、どうしても納得できないという感情が抑えられない。


また沈黙が訪れそうだった時、ウエイトレスがコーヒーを運んできた。


ひきたての豆のいい香りがする。


「弟は結登っていう名前なの。結ぶに登るで、結登」


その言葉にコーヒーカップに触れた指先がかすかに震えた。


やっぱりあの写真の男だ。


「結登は中学校の頃からずっと芹香ちゃんのことが好きだったわ」


「え?」


予想していなかった言葉に思わずコーヒーをこぼしそうになし、慌ててテーブルに置いた。


「意外? 周りの友達はみんな気が付いていたみたいだけれど、芹香ちゃんは気づいていなかったみたい」