真っ暗になった携帯電話をテーブルに戻し、あたしは点滴の針を引き抜いた。


さっきまでと変わらない病室内のハズなのに、どこか空気が変わった気がした。


まるでここだけ別世界になったようだ。


あたしは周囲を見回しそっと立ちあがった。


足元が少しふらついたけれど、大丈夫そうだ。


何がどこから出てくるかわからない。


そんな恐怖から心臓がドクドクドクと、通常の何倍もの速さで動いている。


病室の壁に背中をつけ、ひっきりなしに眼球だけ動かして周囲に変化がないか確認する。


肌寒さを感じハーッと息を吐き出すと、真夏だというのに息が白くなっていた。