電車とホームの隙間は非常に狭く、男の体がハマってしまうスペースはない。


それなのに、男の体はスッポリと線路の方へ落ちてしまい、顔だけがそこに浮かんでいるように見えた。


「い……いやぁぁ!!」


口から力なくダラッと舌を出したその顔。


人々に踏みつけられ、妙な方向へ折れ曲がった首。


あたしは電車内へと数歩後ずさりをした。


お母さんがすぐにかけてくる。


なにかを言っているけれど、あたしの耳にその言葉は届かず、ただ携帯電話のバイブ音だけが届いていたのだった……。