「えぇ。久しぶりに電車とか乗って、少しだけ遠くに行きましょう?」


電車。


その単語にあたしは敏感に反応していた。


でも、お母さんにはそれに気づかれないように、食事を勧める。


おかゆの味は一瞬にしてなくなり、ただ舌の上を水っぽい米粒が通って行くだけだった。


「……いいよ。電車で行こう」


茶碗に残った最後のおかゆをかきこんで、あたしは頷いたのだった。